ブリュッセルでパスポートと全財産を盗まれた話⑥

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およそ5時間ぶりにホテルへと戻ってきた。

本来ならば今頃はアムステルダムを観光しているはずが・・・

 

朝のチェックアウト時にはいなかった受付の女性に事情を説明する。

同じことを何度も話しているので、もはやスラスラと英語が出てくる。

パスポートのコピーがデータで残っていたので、プリントアウトしてもらうことに。

 

それを待ってる間にふと気がついたのだけど、今夜はアムステルダムのホテルに泊まるつもりだったので、今のところは宿がない状態。

さすがに異国の地で野宿というのは避けたいところ。

ただカードも現金も一切持っていないので、どうやって宿泊代金の支払いをするか・・・

 

何か手はないか考えてるうちに、まだカードを止めていないことを思い出す。

フランスで手に入れたSIMカードは国際電話に対応していないらしく、カード会社に連絡を入れたくても入れられないという状態だった。

そういう訳でまだ自分のカードは生きているので、このホテルのシステムに自分のカード情報が残っていれば決済ができるはず!

もはや野宿を避けるためにはこの手しか…

 

自分「このホテルにもう1泊したいんだけど…」

受付の女性「空室ならあるわ。」

自「昨日支払いをした時のカードの情報が残っていたら、それで支払いをしたいんだけど…」

受「確認してみるので、ちょっと待って。」

 

もしカードの情報が残っていなかったら、この後は野宿の場所を探さなければいけないのかと思うと気が重くなってくる。

この時期のブリュッセルはまだ寒いから朝を迎える前に冷たくなっていそうだし、治安も悪いのでもう1段階ほど身ぐるみを剥がされそうだなんて考えながら、受付の女性がパソコンを操作するのを待つ。

 

受付の女性「カードの情報は残ってたわ。」

自(よし、これで野宿回避だ!)

受「でも、あなたはカードを持っていないのに、ちゃんとカード会社からホテルに代金が支払われるの?」

自「それはカード会社が自分の銀行口座から代金を引き落とすから問題ないはず」

受「でも、カードは持ってないんでしょ?」

自(何を気にしてるのか分からないけど、これは一転して大ピンチだ…)

 

当然このまま食い下がるわけにもいかないので、支払いは問題ないということの一点押しで攻める。

とはいえ受付の女性も判断がつかないとのことなので、上司に相談してもらうことに。

フランス語で上司に電話しているのを祈るような気持ちで見守る。

 

受付の女性「上司に確認が取れたわ、決済して問題ないって。」

自分(よっしゃ、これで今度こそ宿確保だ!)

 

こうしてなんとか宿を確保することができた。しかし、あまり喜んでいる暇はない。

自分が帰りつくべき場所はこのホテルではなく、海を渡った日本なのだから。

(つづく)